伏線を楽しむ読書と学びの魅力 〜『【推しの子】』から考える〜
2023年に社会現象とも言える大ブームを巻き起こしたアニメ・漫画作品『【推しの子】』。
私も「一体どのような物語なのだろう?」と気になり、アニメ全話、漫画全巻を通してじっくりと読んでみました。
物語の冒頭からいきなり急展開が訪れ、思わず引き込まれてしまいました。想像以上にミステリアスでサスペンス要素が強く、エンタメ作品でありながら、人間の感情や裏側を描いた非常に奥深い内容でした。
今回はこの『【推しの子】』をきっかけに、“伏線”という物語上の重要な仕掛けについてお話ししたいと思います。
そして、それが私たちの「勉強」にどうつながるのか、一緒に考えてみましょう。
伏線とは? そして「伏線回収」の面白さ
まず、伏線とは物語の中で将来の展開に関係してくるかもしれない出来事や発言、描写などを、あえてさりげなく配置しておく技法のことを言います。
それに対して「伏線回収」とは、物語の終盤などでそれらの伏線が意味を持ち、謎や出来事の答えが明らかになることを指します。
伏線が張られていると、読者や視聴者は「これは何の意味があるのだろう?」「もしかしてこの先こうなるのでは?」と予想しながら読み進めるようになります。
そしてその予想が的中した時の喜びや、まったく思いがけない展開に驚かされる瞬間など、物語を深く楽しむことができるのです。
また、あえて伏線を回収しない作品もあります。読者に自由な解釈を委ね、そこから考察や意見を交わすという楽しみ方も生まれます。
まさに学校の授業で行われる「読解」や「ディスカッション」のようなものです。
伏線の読み取りが「読解力」と「考察力」を育てる
『【推しの子】』にも実に多くの伏線が散りばめられています。
中には、回収されずに残されたままの伏線もあり、それがまた読者の興味をかき立て、自分なりの解釈を育むきっかけとなっています。
この「自分で考える」「他人の意見と比べてみる」「もう一度読み直して気づく」という過程は、まさに読解力や考察力を育てる上で非常に有効なトレーニングになります。
実際に、高校で学ぶ文学作品の多くは、登場人物の心情や筆者の意図が明確に書かれていないことがほとんどです。
だからこそ、自分で考えて、文脈や言葉の裏側から「何を伝えたかったのか」を読み解く力が必要になります。
読書を通して学びに活かすために
伏線を読み取る力=読解力、伏線を自分で考える力=考察力。
この2つの力は、高校受験・大学受験、さらには社会に出てからも非常に大切なスキルとなります。
はじめは難しい小説でなくても構いません。
漫画でもアニメでも良いので、興味を持った作品を「どうしてこうなったのか?」「この言葉にはどんな意味があるのか?」と問いかけながら読んでみてください。
そして、ぜひ『【推しの子】』のような深いテーマ性と仕掛けがある作品に触れてみてください。
楽しみながら、知らず知らずのうちに読解力・考察力が鍛えられていくはずです。
読書はエンターテイメントでありながら、学びでもあります。
「勉強」と「好きなこと」が重なる瞬間を、ぜひ大切にしてください。