【とある生徒さんの第一志望 合格までの軌跡】
のんびりマイペースな彼が、難関校に合格した話
当塾には、いろんな生徒さんがやってきます。
真面目でコツコツ取り組む子、要領よく勉強する子、不安を口にしながら頑張る子…。
そして中には、のんびりマイペースで、少し心配になる子もいます。
今回お話ししたいのは、まさに「のんびりマイペース代表」ともいえるUくんのことです。
彼はイケメンで、頭の回転も速くて、ユーモアもある。
いつも友達の中心にいて、誰とでも自然に打ち解けてしまうようなタイプでした。
でも、そんな彼のペースはあくまで「Uくん流」。
受験直前になっても焦ることなく、悠々としている姿には、正直私の方が心配で気が気でなかったほどです。
「親は発狂、子はのんびり」──よくある光景?
受験期によく見かけるのが、「親は発狂、子はのんびり」という構図。
Uくんも、まさにその典型でした。
今だから笑って話せますが、私自身がその時は塾で“発狂”していました(笑)。
受験直前になっても、「えっ、今このペースで大丈夫なの?」とハラハラすることばかり。
でも、どこかで「この子ならきっとやってくれる」という不思議な信頼感がありました。
彼は、確率の高い安全圏の高校ではなく、
「特色検査もある偏差値上位の難関校に挑戦したい」と自ら決めてくれました。
私にとって、それはとても嬉しい決断でした。
なぜなら、“現状”ではなく、“理想”に挑もうとする意志がそこにあったからです。
もちろん、簡単な道ではありません。
偏差値上位高校受験では特色検査という、ただの学力では測れない力も問われます。
言うまでもなくハードルの高い受験です。
それでも彼の意志を尊重し、「塾として全力で支援する」と約束しました。
信頼とは、完璧な行動のことではありません。
今だからこそ言えますが、宿題をやってこないことも多々ありましたし、
声かけしないとスイッチが入らないこともありました。
でも、それでも信頼していました。
なぜなら、質問すれば明確に答えられる思考力があり、必要な場面での集中力は誰よりも高かったからです。
のんびりしているように見えて、やるときは一気にやり抜く。
模試も自分なりにしっかり分析し、やるべきことに取り組む姿はとても印象的でした。
保護者の方も本当にたくさん心を砕いて支えてくださいました。
私は塾の人間であり、他人だからこそ冷静に見守ることができます。
でも、誰よりも不安を感じ、我が子を思う気持ちは、やはり保護者に勝るものはありません。
そして入試を終えて。
自己採点で見えた現実、そして揺れる気持ち
入試を終えたUくんが持ってきた自己採点の結果は、正直なところ、私たちの想定を下回っていました。
とくに5教科の得点が伸びず、「これは厳しいかもしれない」と感じたのを覚えています。
ただ、特色検査については、事前に決めていた目標通りの点数が取れていました。
その点だけは、自信を持って良いと伝えることができました。
後からわかったことですが、その年は全体的に入試問題が難化しており、多くの受験生の点数が下がっていました。
全体の平均は下がっておりました。
それでも、Uくんにとっては大きなショックだったようで、あのときの彼の表情は今でも忘れられません。
いつも明るく前向きな彼が、静かに落ち込んでいたのです。
切り替えの早さと、合格の瞬間
でも数日後、Uくんは「合格祈願に行きたいから、近くに学問系の神様が祭られてる神社ないですか?」
と笑顔で聞いてきました。
その切り替えの早さは、やっぱり彼らしいなと感じました。
頭の良い子なので、「くよくよしても仕方ない」とわかっていたのでしょう。
できることに集中する。その潔さが、彼の強さだったと思います。
そして迎えた合格発表。
結果は──無事、合格。
報告しに来てくれました。
本人が望んだ難関校への進学が決まりました。
“のんびり”の中にある芯の強さ
Uくんのように、のんびりしているように見える子どもでも、
内に秘めたエネルギーや思考力を持っている生徒さんは多くおります。
大人が焦って、無理に引き上げようとするのではなく、タイミングを見ながら寄り添い、
見守ることの大切さを彼から学びました。
信頼は、行動の完璧さで築かれるものではありません。
ときに約束を忘れ、ときに手を抜きながらも、この子なら「大事なときにきっと力を出せる」と信じて見守る。
そうして築いた信頼は、最後にしっかりと形になって返ってきます。
最後に
Uくんは新しい一歩を踏み出しました。
私たちはただ、その背中を押しただけです。
これからも、どんな道を選んでも彼らしく歩いていってほしいと願っています。
そしてまた、あの教室の机に座り、ふと「受験、あのとき頑張ってよかったな」と思い出してくれたら、
それだけで十分です。
Uくん、合格本当におめでとう。
そして、ありがとう。
2025.05.16
教室からのお知らせ