
・受験生に必要な睡眠時間の目安
・睡眠不足が記憶・集中・学業パフォーマンスにどう響くのか
・受験期でも睡眠時間を守るための具体策
この記事の著者:ヒーローズ東郷校の先生東郷町の個別指導塾ヒーローズ東郷校の先生。誰にでもわかるように、そして今日から実践したくなるよう勉強法から伝え、一生役に立つ学習習慣が身につく指導を心がけています。
ヒーローズ東郷校について
「勉強時間が足りない」
そう感じたとき、真っ先に削られやすいのが睡眠です。
しかも、まじめな受験生ほど、この判断をしがちです。
寝る時間を削れば、そのぶん勉強できる。そう思ってしまうからです。
ですが、そこには落とし穴があります。
睡眠を削ることは、努力ではありません。
多くの場合、それは学習設計のミスです。
睡眠は、勉強していない“空白時間”ではありません。
米国睡眠医学会は、子どもと思春期の睡眠について、十分な睡眠時間を継続して確保することが、注意、学習、記憶、感情の安定など、よりよい健康状態と関わると示しています。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)も、十分な睡眠は集中力や学業パフォーマンス、健康全体に関わると案内しています。
つまり、睡眠は「勉強の外側」にあるものではありません。
勉強を成立させる土台です。
ここを削れば、机に向かう時間は増えても、頭の働きは落ちていきます。
覚えにくい。
集中しにくい。
ミスが増える。
それは気合い不足ではありません。
脳の処理効率が落ちているだけです。
この記事では、受験生に必要な睡眠時間の目安を確認したうえで、睡眠不足が記憶・集中・成績にどう響くのかを整理し、忙しい受験期でも睡眠時間を守るための現実的な工夫までまとめます。
目次
1. 受験生の睡眠時間は何時間必要?
まず結論です。
小学生なら9〜12時間。
中学生・高校生なら8〜10時間。
これは、米国睡眠医学会(AASM)が示している子ども・思春期の推奨睡眠時間です。CDCも同じ基準を紹介しています。AASMは、6〜12歳は1日9〜12時間、13〜18歳は1日8〜10時間の睡眠を regular basis で確保することを勧めています。
ここで、よくある反応があります。
「そんなに寝ていたら、勉強時間が足りない」
気持ちはわかります。
ただ、その考え方には大事な視点が抜けています。
勉強は、長くやれば勝てるわけではありません。
先に必要なのは、使える頭で勉強できているかです。
CDCは、十分な睡眠が学生の集中を助け、集中力と学業パフォーマンスの改善につながるとしています。睡眠時間は生活習慣の話であると同時に、受験勉強の土台でもあります。
2. そもそも、受験生は本当に睡眠不足になりやすい
実際、睡眠不足は珍しい話ではありません。
CDCの紹介するデータでは、2015年の調査で、中学生の約57.8%、高校生の約72.7%が、学校のある日に必要量の睡眠をとれていませんでした。つまり、「受験期だから寝不足」は特別な話ではなく、かなり起こりやすい状態です。
だからこそ、周りも寝ていないから大丈夫、とは考えないほうがいい。
みんなが削っているから、正しいとは限りません。
3. 睡眠時間を削ると何が起こるのか
・記憶が残りにくくなる
受験勉強で本当に怖いのは、「やったのに残らない」ことです。
米国睡眠医学会は、推奨される睡眠時間を日常的に確保することが、注意、学習、記憶、感情の安定などと関わると示しています。反対に、推奨時間より短い睡眠は、注意、行動、学習の問題と関連するとしています。
つまり、夜に英単語や漢字を詰め込んでも、睡眠を削れば、翌日に使える形で残りにくくなる可能性があるということです。
夜遅くまで暗記する。
寝不足で翌朝ぼんやりする。
昨日やったはずなのに抜ける。
焦ってまた詰め込む。
この流れに入ると、勉強時間は増えても、学習の回収率は落ちます。
問題は努力不足ではありません。
記憶を残しやすい状態を、自分で崩しているのです。
・集中力が落ちる
睡眠不足で落ちるのは、やる気だけではありません。
注意力そのものが鈍ります。
CDCは、十分な睡眠が学生の集中を助け、集中力や学業パフォーマンスの改善につながるとしています。また、睡眠が足りない子どもや思春期の若者は、注意や行動の問題を起こしやすく、それが学校でのパフォーマンス低下につながる可能性があるとしています。AASMも、短い睡眠は注意や学習の問題と関連すると示しています。
受験勉強では、これがかなり痛い。
問題文の条件を読み落とす。
計算ミスが増える。
記述のズレが起きる。
過去問で「なぜこれを間違えたのか」が増える。
こうした失点は、学力不足だけで起きるわけではありません。
注意資源が足りていないときにも起きます。
集中力は、根性でひねり出すものではありません。
睡眠で回復させるものです。
・気分も崩れやすくなる
睡眠不足は、ただ眠いだけでは終わりません。
感情の安定にも響きやすくなります。
AASMは、十分な睡眠時間をとることが感情調整やメンタル面のより良い健康アウトカムと関連するとしています。CDCも、睡眠不足の子どもや思春期の若者は、メンタルヘルス上の問題リスクが高いと案内しています。
すると、受験生にはこう出やすい。
小さなミスで一気に落ち込む。
模試の結果を引きずる。
勉強前から「今日は無理」と感じる。
不安で余計に眠れなくなる。
ここで「メンタルが弱い」と片づけるのは雑です。
問題は性格ではありません。
回復が足りていないのです。
4. 長く勉強しているのに伸びない受験生の共通点
ここはかなり重要です。
成績が伸びない受験生の中には、勉強量が少ないのではなく、回復を抜いたまま回しているタイプがいます。
たとえば、こんな状態です。
- 平日はいつも眠い
- 休日に寝だめする
- 夜になると不安でスマホを見る
- 長く机には向かうが、進みは遅い
- 覚えたつもりの内容が抜けやすい
これは、努力不足というより、生活の設計が崩れている状態です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、休日の寝だめについて、「実際には眠りをためることはできない」とし、メリットは極めて限定的としています。
さらに、寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まないこと、日中にできるだけ日光を浴びることが良い睡眠につながると示しています。
つまり、受験生が本当に削るべきなのは睡眠ではありません。
削るべきは、夜のノイズです。
スマホ。
だらだら見直し。
終わらない反省会。
不安からの再計画。
このあたりが、睡眠時間を静かに食っています。
5. 睡眠時間を削るのは本当に得なのか
ここは、はっきり言います。
短期的には“頑張った感”が出ます。長期的には損です。
理由は単純です。
睡眠を削ると、「今夜の勉強時間」は増えます。
その代わり、「明日以降の勉強効率」が落ちやすくなります。
CDCは、十分な睡眠が学生の集中、集中力、学業パフォーマンスに関わると示しています。受験が一夜漬けで終わる勝負なら別ですが、実際は数か月、あるいは1年以上、再現性を積み上げる戦いです。そこでは、毎日そこそこ回る頭を維持するほうが強い。
必要なのはテンションではありません。
再現性です。
6. 受験生が睡眠時間を守るために削るべきもの
1. 寝る前のスマホ
厚生労働省は、寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まないことを勧めています。また、就寝の約2時間前以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、メラトニン分泌が抑制され、入眠が妨げられることがあると説明しています。CDCも、保護者向けの睡眠支援として、夜の光やテクノロジー使用を制限し、子どもの寝室で電子機器を使わせない工夫を紹介しています。
寝る前のスマホは、時間だけでなく、脳の覚醒も奪います。
「少しだけ見る」が、いちばん危ない。
2. 夜の低効率勉強
夜遅く、ぼんやり問題集を眺める1時間より、翌朝のクリアな30分のほうが濃い。
これは珍しい話ではありません。
CDCが示す通り、十分な睡眠は集中や学業パフォーマンスに関わります。受験勉強は、時間の総量だけでなく、処理の質で見たほうが正確です。
時間を積むのではなく、質で見る。
ここを外すと、努力が空回りしやすくなります。
3. 完璧主義
「今日のノルマを全部終えないと寝られない」
これは危険です。
CDCは、平日も週末も一貫した睡眠スケジュールを勧めています。厚生労働省も、休日の寝だめやリズムのずれの問題を指摘しています。毎日100点で回そうとして就寝時刻が崩れるより、80点で安定させるほうが、結果として強い。
受験は、完璧主義の勝負ではありません。
継続設計の勝負です。
4. 夜の反省会
寝る前に模試結果や不安を延々と考える。
これは整理ではなく、脳への追い打ちです。
厚生労働省は、睡眠の不調が続く場合は生活習慣の改善だけでなく、必要に応じて医療機関へ相談する重要性も示しています。夜に不安を増幅させ続けるより、考える時間を昼に寄せ、夜は閉じる時間にしたほうがいい。
7. 受験生の睡眠時間を立て直す5つの方法
1. まず固定するのは起きる時間
睡眠を立て直すとき、最初に整えたいのは起床リズムです。
厚生労働省は、日中にできるだけ日光を浴びること、起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整うと説明しています。
寝る時間を完璧にそろえられなくても、起きる時間を大きく崩さないだけで、立て直しやすくなります。
2. 寝る前は“重い勉強”を置きすぎない
寝る直前に、難問や不安の増える課題を入れると、頭が静まりにくくなります。
厚生労働省は、就寝前の強い光が入眠を妨げる可能性や、就寝1〜2時間前の入浴など、眠りやすい環境づくりを勧めています。夜は、難問攻略より、軽い確認や翌日の準備に寄せたほうが眠りやすくなります。
3. 寝室にスマホを持ち込まない
これはかなり効きます。
厚労省は、寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まないことを明記しています。CDCも、電子機器を子どもの寝室で使わせない工夫を勧めています。意思の強さより、物理的に遠ざけるほうが現実的です。
4. 昼寝は長くしすぎない
厚生労働省は、長時間の昼寝は夜間の良眠を妨げる原因になりうるため、避けるよう案内しています。
眠いからといって長く寝る。
それで夜がずれる。
翌日また崩れる。
このループは、地味ですが痛いです。
5. 睡眠を“余った時間”にしない
多くの受験生は、勉強計画は立てても、睡眠計画は立てていません。
だから最後にしわ寄せが来るのが睡眠です。
順番を逆にしてください。
先に寝る時間を置く。
その残りで勉強計画を組む。
睡眠は、余ったらとるものではありません。
先に確保するものです。
この考え方は、推奨睡眠時間を regular basis で確保するというAASM・CDCの考え方とも一致します。
8. 受験直前ほど、睡眠時間を削らないほうがいい理由
直前期は焦ります。
だからこそ、睡眠を削りたくなる。
でも、本番前に必要なのは、新しい努力感ではありません。
安定した再現性です。
試験本番で必要なのは、知識を引き出すこと、問題文を正確に読むこと、時間配分を判断すること、焦っても崩れないことです。CDCは、十分な睡眠が学生の集中や学業パフォーマンスに関わるとしています。直前期ほど、頭の精度を落とす選択は避けたほうがいい。
前日に詰め込んで満足する。
それは最後のひと押しに見えて、実際には精度を下げることがあります。
9. 保護者ができることは「早く寝なさい」と言うことではない
親が関わるなら、ポイントはシンプルです。
睡眠を叱る対象にしないこと。
「また寝るの?」
「そんなに寝ていて大丈夫?」
「その時間がもったいない」
そう言いたくなる気持ちはわかります。
ですが、夜の不安を強める関わりは、結果として逆効果になりやすいものです。
CDCは、保護者が一貫した睡眠スケジュールを支え、夜の光やテクノロジー使用を抑えることを勧めています。
親にできるのは、叱ることではありません。
眠りやすい環境を整えることです。
たとえば、
- 夜のスマホ時間を減らしやすい環境をつくる
- 起床時刻を大きくずらさない
- 寝る前に不安を増幅させる会話をしすぎない
- 勉強時間の長さより、翌日の頭の状態を見る
このほうが、ずっと建設的です。
10. よくある質問
Q. 受験生は6時間睡眠でも大丈夫ですか?
中高生の推奨睡眠時間は8〜10時間です。AASMとCDCの基準で見ると、6時間は少ない側に入ります。日中の眠気や集中の低下があるなら、見直したほうがよいでしょう。
Q. 休日に寝だめすれば平日の寝不足は取り戻せますか?
厚生労働省は、休日の寝だめについて「実際には眠りをためることはできない」とし、メリットは極めて限定的としています。
Q. 寝る前に暗記するのは意味がありますか?
暗記自体が悪いわけではありません。
ただ、寝る直前まで強い光や興奮度の高い活動が続くと、入眠が妨げられやすくなります。厚生労働省は、就寝前のスマートフォンの強い光が入眠を妨げる可能性を示しています。
Q. 生活習慣を整えても眠れない場合はどうすればいいですか?
厚生労働省は、ガイドを実践しても十分な時間眠れない、睡眠で休養感が得られない、日中の眠気が強いなどの症状が続く場合は、速やかに医師に相談するよう案内しています。
11. まとめ|受験生が削るべきは睡眠ではなく、夜のノイズ
最後に整理します。
受験生の睡眠時間の目安は、
小学生なら9〜12時間、
中学生・高校生なら8〜10時間です。
そして、睡眠を削ると起こりやすいのは、次の3つです。
- 記憶に残りにくくなる
- 集中力が落ちやすくなる
- 気分が崩れやすくなる
AASMは、十分な睡眠が注意、学習、記憶、感情調整と関連し、短い睡眠は注意・行動・学習の問題と関連すると示しています。
これは甘えの話ではありません。
学習の土台の話です。
受験生は、つい「もっとやらなきゃ」と思います。
ですが、そこで睡眠を削ると、翌日の自分が使える頭まで削ることになります。
問題は根性ではありません。
先に整えるべきは、脳のメモリです。
今日はまず、この3つだけやってください。
- 今週の起きる時間を固定する
- 寝る前のスマホを寝室から外す
- 「勉強時間」だけでなく「睡眠時間」も記録する
大きく変える必要はありません。
まずは、睡眠を後回しにしないことからです。
受験で勝つのは、いちばん遅くまで起きた人ではありません。
毎日、使える頭を残した人です。
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