「わからない」と言えない中学生──質問できない子の伸び悩みと、家庭でできる関わり方
2学期に入り、授業の内容が一段と難しくなってきました。数学は関数や図形へ、英語は文の長さが一気に増える時期です。長久手市で個別指導塾をしていると、9月から10月にかけて決まって増えるご相談があります。「うちの子、わからないところを人に聞けないんです」というものです。
成績が伸び悩んでいる中学生を見ていると、頭の良し悪しよりも先に、「わからない」と口に出せるかどうかで差がついている場面が本当に多くあります。やっかいなのは、本人が困っている様子を見せないことです。家では普通に過ごし、宿題も一応出している。だから家庭では気づくのが遅れます。
今日は、その「言えない」の正体と、家庭での具体的な聞き方について書いていきます。
静かに座っている子が、いちばん見えにくい
授業中に手を挙げて「先生、ここがわかりません」と言える中学生は、実際にはごく一部です。多くの子は、わからないまま次の問題へ進みます。板書はきれいに写せているし、私語もしない。先生から見れば「まじめに受けている生徒」です。
塾でも同じで、入って最初の何回かは、ほとんどの生徒が「大丈夫です」と答えます。本当に大丈夫なのか、それとも聞き方がわからないのか。そこを見分けるところから指導が始まります。
ご家庭で気づけるサインは、勉強の中身よりも「勉強のしかた」に出ます。
・宿題の時間が急に短くなった(答えを写している可能性)
・逆に、同じページで何十分も止まっている
・テストが返ってきても中身を見せたがらない
・「どうだった?」に対して「ふつう」「べつに」しか返ってこない
・ワークの丸つけが、なぜか全部○になっている
中学生が質問できない、4つの理由
「聞けばいいのに」と大人は思いますが、本人にははっきりした理由があります。大きく分けると次の4つです。
このうち、いちばん多いのは2番目の「何がわからないかが、わからない」です。中1の正負の数でつまずいた子が、中2の連立方程式で手が止まる。本人は「連立方程式がわからない」と思っていますが、実際には符号の処理でつまずいている。原因の場所が本人にも見えていないので、質問の形にできないのです。
3番目の「まわりの目」も、思春期の中学生には大きな壁です。クラスの人数が多い学校ほど、手を挙げるハードルは上がります。長久手市の中学校はどこも規模が大きく、1クラス30人以上の中で「ここがわかりません」と言うのは、大人が思う以上に勇気がいります。
放っておくと、どこまで進んでしまうのか
数学と英語は、積み上げの教科です。1つの単元に穴があると、その上に乗る単元がまるごと不安定になります。「わからない」を言えない状態が続くと、次のような順番で進んでいきます。
怖いのは4段階目で、ここまで来ると「わからないから嫌い」ではなく「嫌いだから見たくない」に変わります。そうなると、内容を教える前に気持ちを戻すところから始めなければならず、時間がかかります。
逆に言えば、1段階目と2段階目のうちに手を打てれば、立て直しはずっと軽く済みます。宿題に時間がかかるようになった、答えを写していた──そのくらいのタイミングが、実は動きどきです。
家庭でできること 聞き方を少し変えてみる
「わからないところある?」──ごく自然な質問ですが、実はいちばん答えにくい聞き方です。わからない場所がわかっていれば、その子はすでに半分解決しています。答えられないから「ない」と言い、会話はそこで終わります。
おすすめは、考えを聞くのではなく事実を聞くことです。事実なら、機嫌が悪い日でも答えられます。
| よくある聞き方 | 言いかえるなら |
|---|---|
| わからないところある? | 今日はどこまで進んだ? |
| ちゃんと勉強したの? | 今日は何ページやった? |
| なんでわからないの? | どこから止まった? |
| 早くやりなさい | 何時から始める? |
そして、子どもが「ここがわからない」と言えたときの反応がいちばん大事です。「そんなことも?」と返してしまうと、次から言わなくなります。「よく言えたね、じゃあ一緒に見てみよう」で十分です。言えばラクになる、という経験を1回でも作れると、その後が変わります。
「わからない」を言葉にする3ステップ
塾では、質問のしかたそのものを練習します。といっても難しいことではなく、次の3つを順番に言えるようにするだけです。
たとえば「連立方程式がわかりません」ではなく、「代入のところまではできて、そのあと符号でおかしくなる。かっこを外してから代入してみた」と言えれば、その場で解決します。これは能力ではなく、練習で身につく技術です。
テスト前に、間違えた問題を1つだけ選んで「どこまではわかった?」と聞いてみてください。答えを教える必要はありません。本人が説明しようとした時点で、どこでつまずいたかが半分見えてきます。
個別指導が向いているのは、まさにこの部分です。1対1、あるいは少人数であれば、まわりの目を気にせず「わかりません」と言えます。そして講師の側から「今どこで止まった?」と踏み込んで確認できます。集団の授業では止まった瞬間を拾いきれませんが、個別なら手が止まった数秒で気づけます。
よくある質問
Q. 「わからないところある?」と聞いても「ない」としか言いません。
A. 質問を変えてみてください。「今日はどこまで進んだ?」「何ページやった?」のように、答えが事実で返せる聞き方にすると会話が続きます。そこから「じゃあ、そのページで一番時間がかかったのはどれ?」とつなげると、つまずきが見えてきます。
Q. 親が教えようとすると、けんかになってしまいます。
A. 中学生の時期は、親子だとどうしても感情が入ります。家庭では「聞き役」に徹して、内容を教える役目は学校や塾に任せるほうがうまくいくことが多いです。役割を分けるだけで、家の空気がずいぶん変わります。
Q. 人見知りで、塾でも質問できないのではと心配です。
A. 最初から質問できる生徒のほうが少数です。当塾でも、はじめは講師の側から「今どこ?」と声をかけ、答えやすい形で聞いていきます。数回通ううちに、自分から手を挙げられるようになる生徒がほとんどです。
まとめ
「わからない」と言えないのは、性格の問題でも、やる気がないからでもありません。多くの場合は、どこがわからないのかを本人がつかめていないだけです。そして、それは大人の側の聞き方を少し変えるだけで、驚くほど言葉になって出てきます。
2学期は内容が難しくなる一方で、まだ取り返しがきく時期でもあります。宿題の様子が変わった、テストを見せたがらない──そんな小さな変化が見えたら、それは早めに動けるサインだと考えてください。お子さんが何につまずいているのか一緒に確かめるところから、私たちがお手伝いします。
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