モーツァルトとサリエリ
1984年に公開された映画「アマデウス」。知ってる方も多いかもしれません。
そこではモーツァルトの圧倒的な才能に気付いたサリエリが嫉妬を抱き、彼の才能を潰すための策略に打って出ます。
モーツァルトとサリエリは映画では絶対に交わることのない、わかりあうことのできない関係でした。
ですが、これは事実と異なるのです。
では果たしてどのように違うのでしょうか。
①サリエリがモーツァルトを嫌っていた証拠はない
映画では水と油のような関係でした。
しかし実際はサリエリ個人がモーツァルトを嫌っていたというよりは、イタリア人音楽家たちがモーツァルトを快く思っていなかったというのが正しいようです。
モーツアルトの遺された手紙から、サリエリ含むイタリア人音楽家たちがモーツアルトの音楽家としてのキャリアを邪魔するようなことをヨーゼフ皇帝(音楽家たちの雇い主)に吹聴していたというのが明らかになっています。
しかしながら、サリエリがモーツァルトを毒殺するほど憎んでいたというのはリアリティに欠ける話です。
②実は仲がよかった?
そんなサリエリとモーツァルトですが、実は「平和なライバル関係」だったという声もあがっています。
例えばモーツァルトはオペラ『魔笛』のパフォーマンスにサリエリを加えようとしていました。
さらにサリエリもこのオペラを大層気に入り、モーツァルトが「サリエリは上映中何度もブラボー!と叫んだんだ」ということを妻に書いた手紙が残っています。
相手を邪魔に思うことはあっても、その才能はお互い認め合っていた仲なのかもしれませんね。
③レクイエムを依頼したのはサリエリではない
作曲中にモーツァルトが体調を崩し、そのまま帰らぬ人となったといういわくつきの『レクイエム』。
映画ではサリエリが変装してモーツァルトに依頼をし、病に伏せながらの作曲がモーツァルトに死を招きました。
実際に依頼したのはと、フランツ・フォン・ヴァルゼックという男性。
彼は妻を亡くしたばかりで、その妻のためにレクイエムを作ろうと思い立ちました。
ヴァルゼックはプロの音楽家に匿名で作品を作ってもらい、それを自分の作品として公表するということをしていました。
このレクイエムも彼の作品として発表するためにモーツァルトへ依頼したのだと考えられています。
④サリエリはモーツァルトを殺していない
それでは最大の争点、モーツァルトの死について考えましょう。
映画ではサリエリがモーツァルトを死に追いやるためにあれこれと画策を巡らせており、実際にサリエリは冒頭部分で「許してくれ、モーツァルト!君を殺したのは私だ」と繰り返しています。
それではモーツァルトの死はサリエリの犯行でしょうか?この可能性はゼロだと言われています。モーツアルトの死後、サリエリは犯人扱いされて心を痛めていたそうです。
また、弟子や他の音楽家に「あなたがモーツァルトを殺したのか」と聞かれると毅然とした態度で否定していたというエピソードもあり、サリエリがモーツァルトを殺したというのはありえないでしょう。
以上のことをまとめると、モーツァルトとサリエリは映画『アマデウス』で描かれているような憎み合い殺してしまう関係ではなかったと言えます。
確かにサリエリにはモーツァルトの才能を羨み、嫉妬する気持ちがあったのかもしれませんが、同時にその類まれなる才能を認めていたのも事実です。
2人は意外によきライバル関係だったのかもしれません。
私たちの日常生活でも、お互いの才能を認めた上で競い合い、高め合うことができる関係を誰かと築きたいですね。