「行った?」「うん、行って来た」
受験前のクラスでは、こんな会話が交わされていました。“学問の神様”の
菅原道真公が祭られている太宰府天満宮への参拝です。そんな友人の会話を
聞きながら私は「しかし、道真さんは古文と漢文しか知らんだろう。数学と
か英語とかわからんのに参拝してご利益があるんか?」と、うそぶいていま
した。
今でも受験生の聖地で、私が受験生だった昔の風景と変わらず、合格を祈
願した絵馬が境内にずらりと掛けられています。
さて、この道真さんが挑んだ難関の国家試験「方略試」の問題と解答が記
録に残っているのを後年、知りました。神様がどんな解答をしたか、気にな
りますね。
問題は2問。現代文に直すと①氏族を明らかにしなさい②地震について書
きなさい。なんと②は地学、理科の分野です。地震が続発していたから、こ
んな問題が出題されたといわれているので時事問題とも言えるでしょう。
道真さんの②の解答です。現代文でかいつまんで紹介します。「地震の原
因。儒教では、君主への戒め。道教では陸は海に浮かんでいる。この陸を支
えているのが大亀15匹で、交代する際に地震が発生する。仏教では地下に水
があり、その下に風があり、風が地震を起こす」。他にも多々、書いていら
っしゃいます。実に博識ぶりがわかります。その結果は「中の上」で合格。
慣例で、これが最高点なのだとか。
高校受験も間近です。中学3年生は地震について火山活動、地殻内部の急
激な変動、初期微動、主要動など道真さんより知識があります。ただ、道真
さんも、こんなに祈願者が多いと平等に点数が高い順に「合格」を与えるし
かないでしょう。つまるところ、受験生の努力。自信を持ち、気を抜かずに
邁進しましょう。
偉そうに道真さんに失礼な発言をした私も天満宮の御守りを懐に忍ばせて、
受験したことを白状します。「人事を尽くして天命を待つ」という明鏡止水の
気持ちより、「苦しい時の神頼み」「溺れる者は藁をも掴む」の心境でした。
竹本 啓自